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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > スポット溶接とは?自動車ボディ修理での仕組み・MIG溶接との使い分けと設備
スポット溶接とは、重ねた2枚以上の鋼板を電極ではさんで押さえつけ、短い時間に大きな電流を流して、板と板が触れている点だけを溶かしてつなぐ溶接です。自動車のボディは、新車の工場で主にこのスポット溶接で組み立てられているため、パネル交換をする鈑金工場でも、同じ方式で元に戻すのが基本になります。
この記事では、スポット溶接の仕組み、修理でのスポット溶接機・MIG溶接・プラグ溶接の使い分け、高張力鋼板を扱うときの注意、スポット溶接機を入れるときの設備と電源、溶接作業に関わる安全の決まりを整理します。どの方法で何点溶接するかは車ごとに違うので、作業は必ず自動車メーカーの修理書に従ってください。安全の決まりは労働安全衛生規則と厚生労働省の資料で確かめ、出典は記事の最後に載せています。
スポット溶接は「抵抗溶接」の一つです。金属に電流を流すと、電気の通りにくいところで熱が出ます。2枚の鋼板を重ねて電極ではさむと、板と板が触れている部分が一番電気を通しにくく、そこが熱で溶けます。電流を止めて押さえたまま冷ますと、溶けた部分が固まって、碁石のような形の接合部(ナゲット)ができます。
この方式は、溶接棒やワイヤーを足さずに接合でき、熱が入る範囲が狭いので、薄い鋼板が歪みにくいという特徴があります。一方で、電極が板の両側から届く場所でなければ使えず、板の表面の塗料や錆、すき間があると、きちんとしたナゲットができません。修理の現場では、溶接する面の塗膜をはがし、板どうしをクランプで密着させてから打つのが基本の手順です。
スポット溶接は板の接触面だけを電気の熱で溶かす接合
スポット溶接とは、重ねた鋼板を2本の電極ではさんで加圧し、短時間に大電流を流して、板どうしが触れている面を電気抵抗の熱で溶かし、点状に接合する抵抗溶接の方法です。自動車のボディは新車の工場でこの方式によって組み立てられており、鈑金工場がサイドパネルやピラーなどの溶接部品を交換するときも、メーカーの修理書がスポット溶接を指定していることが多くあります。溶接ワイヤーを足さず、熱の入る範囲が狭いため、薄い鋼板でも歪みが少ないのが長所です。ただし電極が両側から届かない場所には使えず、塗膜や錆、板のすき間があると接合の強さが足りなくなります。そのため、塗膜をはがし、クランプで密着させてから打つ下準備が、仕上がりの強さを左右します。
鈑金工場の修理では、スポット溶接機だけですべての接合を済ませられるわけではありません。場所と板の重なり方によって、MIG溶接やプラグ溶接を組み合わせます。
| 方法 | 仕組み | 主に使う場面 |
|---|---|---|
| スポット溶接機 | 電極で板をはさみ、電気抵抗の熱で点状に接合する | 電極が両側から届く重ね部分。新車時と同じ方式で戻せる |
| MIG溶接 | ワイヤーを送りながらアークで溶かし、線状につなぐ(アーク溶接の一つ) | パネルを途中で切ってつなぐ突き合わせ部分、片側からしか届かない場所 |
| プラグ溶接 | 上の板に穴を開け、MIG溶接で穴を埋めて下の板とつなぐ | スポット溶接機の電極が届かない重ね部分で、スポットの代わりに使う |
古いパネルを外すときは、新車時に打たれたスポットの点をスポットカッターやドリルで削り取り、パネルをはがします。新しいパネルを付けるときは、修理書が示す位置と数で打ち直します。修理書によっては、MIG溶接以外の接合方法や、溶接と接着剤の併用を指定している車もあります。
本番の前には、同じ板厚と材質の切れ端で試し打ちをし、はがして接合の強さを確かめます。電極の先がすり減ったり汚れたりすると、同じ設定でも接合が弱くなるので、電極の手入れも作業の一部です。
場所と板の重なりで3つの方法を使い分ける
自動車の鈑金修理で使う溶接は、スポット溶接機、MIG溶接、プラグ溶接の3つです。スポット溶接機は電極が板の両側から届く重ね部分に使い、新車時と同じ方式で接合を戻せます。MIG溶接はワイヤーを送りながらアークで溶かす方法で、パネルを途中で切ってつなぐ突き合わせ部分や、片側からしか届かない場所に使います。プラグ溶接は上の板に穴を開けてMIG溶接で埋める方法で、スポット溶接機が入らない重ね部分の代わりになります。どの場所にどの方法を何点使うかは自動車メーカーの修理書が車ごとに決めているので、自己判断で置き換えないのが原則です。作業前には同じ板厚と材質の切れ端で試し打ちをし、はがして強さを確かめてから本番に入ります。
最近の乗用車は、ピラーやサイドシル、ルーフの補強などに、引っ張る力に強い高張力鋼板を多く使っています。薄くても強いので車を軽くできる材料ですが、修理では普通の鋼板と同じ扱いができない場面があります。
どの部位にどの鋼板が使われ、どう修理するかは、メーカーの修理書に部位ごとに書かれています。修理書を確かめずに、慣れた方法で加熱や切断をすると、見た目は直っても、衝突したときの強さが新車時と変わってしまうおそれがあります。高張力鋼板を多く使う車を受けるなら、溶接機の能力が修理書の求める条件に届くかどうかを、溶接機の販売元と確かめてください。
高張力鋼板は修理書の指定どおりに直すのが前提
高張力鋼板とは、普通の鋼板より引っ張る力に強い鋼板のことで、乗用車のピラー、サイドシル、ルーフの補強などに多く使われています。修理で気をつけたいのは、熱を入れると強度が落ちる材料があること、部位によっては加熱修正や途中で切ってつなぐ修理を禁じ、部品ごとの交換を指定していること、板が強く厚いためスポット溶接機の能力が足りない場合があることの3点です。3枚重ねの部分では、2枚重ねより大きな電流と加圧の力が要ります。どの部位をどう直すかは自動車メーカーの修理書に部位ごとに書かれているので、慣れた方法で済ませず、修理書を開いてから作業の段取りを決めます。溶接機を選ぶときも、扱う車の修理書が求める条件に届く機種かを販売元に確かめます。
スポット溶接機は大きな電流を使うため、置く場所より先に電源を確かめる必要があります。機種によって、単相200ボルトか三相200ボルトか、必要な電気の容量、加圧にエアを使うかどうか、電極を冷やす仕組みが違います。
| 確かめること | 内容 | 相談する先 |
|---|---|---|
| 電源の種類と容量 | 単相か三相か、必要な容量、専用のブレーカーと配線 | 電気工事店、電力会社 |
| 電力の契約 | 動力の契約があるか、契約の容量で足りるか | 電力会社 |
| エアの供給 | 加圧にエアを使う機種なら、コンプレッサーの能力と配管 | 設備の販売元 |
| 冷却 | 電極やケーブルを水などで冷やす機種か | 設備の販売元 |
| 置き場所と取り回し | ガンの届く範囲、ケーブルの長さ、車の周りの通路 | 設備の販売元 |
中古の溶接機を入れる場合は、電極、ケーブル、ガンの付属品がそろっているか、設定どおりの電流が出るかを実機で確かめます。中古設備の選び方は鈑金塗装の設備を中古で揃えるで詳しく説明しています。物件を決める前に電源の条件を確かめておくと、あとから配線工事が大きくなるのを防げます。
スポット溶接機は電源の種類と容量を物件選びの段階で確かめる
スポット溶接機を入れるときに最初に確かめるのは電源です。機種によって単相200ボルトか三相200ボルトか、必要な容量がどれだけかが違い、大きな電流を使うため専用のブレーカーと配線が要ることが多くあります。三相の機種なら動力の契約が必要で、契約の容量が足りなければ電力会社との変更手続きも入ります。加圧にエアを使う機種はコンプレッサーの能力と配管、電極やケーブルを冷やす機種は冷却の仕組みも確認します。物件を借りる前に、建物に来ている電源の種類と容量を電気工事店に見てもらえば、開業直前に配線工事が膨らむ事態を避けられます。中古の機種は、付属品の欠品と、設定どおりの電流が出るかを実機で確かめます。
鈑金工場の溶接作業には、労働安全衛生法の決まりがかかります。従業員に作業させるときは、次の2つを押さえておきます。
スポット溶接機は電気抵抗で発熱させる方式なので、アーク溶接の決まりがそのまま当てはまるかは、機種と作業の内容で確かめる必要があります。所轄の労働基準監督署か講習機関に確認してください。溶接の火花は、アンダーコートやシーラー、内装材に燃え移ることがあるので、消火器を手の届く場所に置き、周りの可燃物をよけてから作業します。資格と講習の全体は板金塗装に資格は必要?にまとめています。
MIG溶接は特別教育と溶接ヒュームの対策が要る
鈑金工場の溶接のうち、MIG溶接とプラグ溶接はアーク溶接に当たるため、従業員に作業させるには労働安全衛生規則第36条第3号に基づく特別教育が必要です。さらに、金属アーク溶接等作業で出る溶接ヒュームは、2021年4月1日から特定化学物質障害予防規則の管理第2類物質になり、全体換気装置などによる換気、有効な呼吸用保護具の使用、特定化学物質作業主任者の選任、常時従事する人への6か月以内ごとの特殊健康診断などが事業者の義務になりました。屋内で続けて溶接する作業場では、溶接ヒュームの濃度の測定も求められます。スポット溶接機は抵抗溶接なので扱いが違う可能性があり、所轄の労働基準監督署に確かめるのが確実です。人を雇う前に教育と健康診断の予定を組んでおきます。
設備の手配や開業準備のご相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。ご相談は、自動車整備・自動車販売・自動車鈑金などの事業者様に限って受け付けています。
自己判断で置き換えないのが原則です。どの場所にどの方法を何点使うかは自動車メーカーの修理書が決めています。スポット溶接機の電極が届かない場所でプラグ溶接を使うなど、修理書が認める範囲で使い分けます。
MIG溶接などのアーク溶接は、労働安全衛生規則第36条第3号の特別教育が必要です。スポット溶接機は抵抗溶接なので、どの教育や手順が必要かは、使う機種と作業内容をもとに所轄の労働基準監督署や講習機関に確かめてください。
ボディ修理用の機種は、単相200ボルトや三相200ボルトを使うものが多く、専用のブレーカーと配線が必要になることがあります。機種の仕様を販売元に確かめ、建物の電源で足りるかを電気工事店に見てもらってください。
同じようには直せない部位があります。熱で強度が落ちる材料や、切ってつなぐことを禁じている部位があり、修理書が部品ごとの交換を指定していることもあります。部位ごとに修理書を確かめてください。
できます。日本カーネットの整備システム・整備ソフト DREAM POWERは、顧客と車両の管理、見積・請求に使え、修理の内容を車両ごとの履歴に残せます。自動車整備ソフトや自動車整備システムは、鈑金見積の取り込みや代車の管理まで含めて、自社の流れに合うかで選んでください。
記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。溶接の方法と箇所は自動車メーカーの修理書に従い、法令の個別の判断は所轄の労働基準監督署などにご確認ください。
自動車鈑金塗装の開業、まず何から始めますか?
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