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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > 板金塗装の色が違うクレームを防ぐ対応|受付の記録・引き渡し確認・やり直しの基準
板金塗装のクレームで多いのは「色が違う」「仕上がりが思っていたのと違う」という申し出です。こうしたクレームの多くは、受付のときの説明と記録、引き渡しのときの確認の2か所で減らせます。色の差がゼロにならない理由を先に伝え、塗装する範囲を見積に書き、入庫時の写真を残しておけば、申し出を受けたときも事実をもとに話し合えます。
この記事では、鈑金工場がクレームを防ぎ、受けたときに落ち着いて対応するための手順を、色が違って見える理由、受付の記録、引き渡しの確認、やり直しの基準、法律の考え方、保険修理の関係者の順にまとめます。法律の部分は民法と消費者契約法の条文をe-Gov法令検索で確かめた範囲で書いています。個別の案件の判断は弁護士や消費生活センターなどの専門の窓口に確かめてください。出典は記事の最後に載せています。
補修した部分の色が周りと違って見える原因は、塗料の作り方だけではありません。車の側と見る条件の側にも原因があります。
このため、腕のよい職人でも、周りと完全に同じ色を作ることは簡単ではありません。差を目立たなくするために、隣のパネルまで色をなじませる「ぼかし」を入れることがあります。調色の手順は調色のやり方、色の番号の見方はカラーコードの調べ方で詳しく説明しています。
「色が違う」の原因は塗料・車・見る条件の3つ
板金塗装で色が違って見える原因は、大きく3つに分かれます。1つ目は塗料の側で、配合や試し吹きの比べ方が足りない場合です。2つ目は車の側で、周りの塗装が年数とともに日光や洗車で変わり、カラーコードどおりの新車の色とずれていることや、鋼板と樹脂バンパーのように材質が違う部品が並んでいることです。3つ目は見る条件で、工場の照明と屋外の太陽光、正面と斜めの角度で、同じ塗装でも見え方が変わります。メタリックやパールの色は特に角度の影響を受けます。お客様に「新車と同じ色に戻ります」と言い切らず、差が出る理由とぼかしで目立たなくする方法を受付のときに説明しておくと、引き渡しの場で驚かれることが減ります。
色のほかに、仕上がりについての申し出として次のようなものがあります。どれも引き渡しの前に工場の中で見つけられるものが多く、点検の項目に入れておくと防げます。
| 申し出の内容 | 考えられる原因 | 工場での確かめ方 |
|---|---|---|
| 色が違う | 調色の不足、ぼかしの範囲、見る光の違い | 屋外の光で、正面と斜めから比べる |
| 表面がざらつく、つやが違う | 塗り肌の違い、磨きの不足 | 周りの塗装と並べて光の映り込みを比べる |
| 小さなぶつぶつ、塗料のたれ | ほこりの混入、塗る量の多さ | 斜めから光を当てて見る |
| しばらくして段差や線が出た | パテの乾燥や下地づくりの不足 | 研磨後と塗装前の状態を写真で残す |
| すき間がそろっていない | 部品の組み付けの位置 | ドアやボンネットのすき間を左右で比べる |
| 前からあった傷を直してほしかった | 修理の範囲の説明の食い違い | 見積と入庫時の写真で範囲を確かめる |
最後の「範囲の食い違い」は、作業の腕より説明の行き違いから生まれます。それでもお客様から見れば「頼んだのに直っていない」となるため、次の受付の記録が効いてきます。
クレームを受けたとき、話し合いの土台になるのは入庫したときの記録です。記録が無いと、「前からあった傷か」「工場で付いた傷か」を確かめられません。
車の前後左右と斜め4方向、損傷の部分の近景、修理しない場所にある既存の傷やへこみを撮ります。毎回同じ順番で撮ると、撮り忘れが減ります。撮った写真は、車両と日付が分かる形で保存します。
お客様の希望で費用を抑える方法を選んだときは、その結果どういう仕上がりになりうるかを説明し、見積や作業指示書に書いて残します。民法第636条は、注文者が与えた指図によって生じた不適合について、注文者は追完や減額などを求められないとしています。ただし、請負人がその指図が不適当だと知りながら告げなかったときは、この限りではありません。説明したことを記録に残しておく意味はここにあります。
受付の記録は「入庫時の写真」と「見積に書いた範囲」の2つ
板金塗装のクレームを防ぐ受付の記録は、入庫時の写真と、見積に書いた修理と塗装の範囲の2つです。写真は前後左右と斜め4方向、損傷部の近景、修理しない場所の既存の傷を毎回同じ順番で撮り、車両と日付で探せるように保存します。見積には、修理する部分としない部分、塗装する面とぼかしの範囲、部品の種類、色の差がゼロにならないこと、納車の目安を書きます。お客様が費用を抑えるために部分塗装などを選んだ場合は、仕上がりへの影響を説明したことも書き残します。民法第636条は、注文者の指図で生じた不適合について注文者は追完などを求められないとしつつ、請負人が指図の不適当を知りながら告げなかったときは例外としているため、説明の記録が判断の材料になります。
引き渡しは、お客様と一緒に仕上がりを見る最後の機会です。工場の中だけで渡さず、できれば屋外の自然光の下で、補修した部分を正面と斜めから見てもらいます。
作業中の写真は、パテや下地など、完成後には見えなくなる工程を説明するときに役立ちます。お客様が「本当に直したのか」を気にする場面でも、写真があれば言葉だけより伝わります。
申し出を受けるたびにその場で判断すると、人によって対応が変わり、別のお客様との間で不公平が出ます。工場として、やり直しをする場合と、説明で終える場合の基準を先に決めておきます。
| 状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 工場の作業が原因の不具合(ぶつぶつ、たれ、すき間、付け忘れ、後から出た段差) | やり直す。手直しの方法と日程を伝える |
| 屋外の光で見ても、明らかに色の差が分かる | 調色とぼかしをやり直す |
| 見積で説明した範囲の差(ぼかしを入れない選択をした など) | 記録を見せて説明する。追加の作業は別の見積にする |
| 修理の範囲の外にあった傷 | 入庫時の写真で確かめ、直すなら別の見積にする |
保証の期間ややり直しの範囲を自社の約束として決めるなら、見積書や納品書に書いて渡します。口頭だけの約束は、あとで言った、言わないの話になりがちです。
やり直しの基準は「工場の原因か」「説明した範囲か」で分ける
板金塗装のやり直しの基準は、不具合の原因が工場の作業にあるか、見積で説明した範囲の差かで分けると決めやすくなります。塗装のぶつぶつやたれ、すき間のずれ、部品の付け忘れ、時間がたって出た段差、屋外の光で見ても明らかな色の差は、工場の作業が原因と考えてやり直します。お客様が費用を抑えるためにぼかしを入れない方法を選んだ場合や、修理の範囲の外にあった傷は、入庫時の写真と見積の記録を見せて説明し、追加の作業をするなら別の見積にします。民法第562条には、買主に不相当な負担を課さないときは売主が求められた方法と違う方法で追完できるという定めもあり、手直しの方法を工場から提案する余地があります。基準は紙にして、受付の担当者全員が同じ説明をできるようにします。
車の修理は、民法では「請負」の契約にあたります。請負は、一方が仕事の完成を約束し、相手がその結果に報酬を払う契約です(民法第632条)。修理の仕上がりが契約の内容に合わない場合、売買の契約不適合の規定が準用され(第559条)、お客様は修補などの追完(第562条)、報酬の減額(第563条)、損害賠償や契約の解除(第564条)を求めることがあります。
| 条文 | 内容の要点 |
|---|---|
| 民法第632条 | 請負は仕事の完成と、その結果への報酬を約束する契約 |
| 民法第559条、第562条〜第564条 | 売買の規定を準用。追完(修補など)、減額、損害賠償、解除 |
| 民法第636条 | 注文者の材料や指図で生じた不適合は、原則として請求できない |
| 民法第637条 | 注文者は、不適合を知った時から1年以内に通知しないと請求できない(請負人が引渡し時に知っていた、または重大な過失で知らなかった場合を除く) |
| 消費者契約法第4条 | 重要事項について事実と違うことを告げ、消費者が誤認して契約した場合は取り消せる |
| 消費者契約法第8条 | 損害賠償の責任を全部免除する条項などは無効。ただし契約不適合の場合に追完や減額の責任を負うとしているときは例外がある |
| 消費者契約法第10条 | 消費者の利益を一方的に害する条項は無効 |
消費者契約法は、事業者と消費者(事業のためでない個人)との契約に使われる法律です(第2条)。個人のお客様の車を直すときは、この法律も関わります。たとえば「仕上がりについては一切責任を負いません」という条項を作っても、第8条により無効とされる場合があります。受付で「新車と同じ色になります」と事実と違うことを言うと、第4条の取消しの対象になりうる点にも注意します。販売店や整備工場から仕事を受けるときは事業者同士の取引なので、この法律は使われず、民法と取引先との約束で考えます。
修理は民法の「請負」、個人客には消費者契約法も関わる
車の板金塗装の修理は民法第632条の請負にあたり、仕上がりが契約の内容に合わない場合は第559条で売買の規定が準用され、お客様は修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、解除を求めることがあります。お客様の側は、不適合を知った時から1年以内に工場へ通知する必要があります(第637条)。個人のお客様との契約には消費者契約法も使われ、損害賠償の責任を全部免除する条項は第8条で無効とされます。ただし、契約不適合の場合に工場が修補や減額の責任を負うと定めているときは、損害賠償を免除する条項に例外が認められています。自社の保証の内容は「やり直しの方法と期間」を具体的に書き、責任を一切負わないといった書き方は避けると、法律の考え方とも合います。
自動車保険を使う修理では、お客様、工場、損害保険会社の3者が関わります。日本損害保険協会のガイドライン(2025年2月17日制定)は、工場と損害保険会社の間に民法上の契約関係はなく、保険会社から工場への直接の支払いは、お客様の利便のための慣行だと説明しています。修理を頼んでいるのはお客様で、仕上がりについての話し合いの相手もお客様です。
保険修理で揉めやすいのは、保険会社と決めた修理の範囲と、お客様が期待している仕上がりが食い違う場面です。たとえば、協定した塗装の範囲にぼかしが入っていない、交換でなく板金修理になった、といった内容は、作業の前にお客様にも伝えておきます。協定の範囲を超える作業をお客様が望むなら、その分は自費の見積として分けて出します。保険修理の流れと協定の考え方はアジャスターと保険修理の流れで説明しています。
代車を貸しているあいだの事故や返却の遅れも、揉めごとの種になります。貸し出しの条件は代車の準備を参考に、書面で決めておきます。
クレームの記録や修理の履歴の残し方で迷ったら、お問い合わせフォームからご相談ください。ご相談は、自動車整備・自動車販売・自動車鈑金などの事業者様に限って受け付けています。
屋外の自然光の下で、お客様と一緒に正面と斜めから見て、どこがどう違って見えるかを確かめます。そのうえで、見積に書いた塗装の範囲と入庫時の写真を見ながら、やり直すか、説明で終えるかを自社の基準に沿って判断します。
周りの塗装が年数とともに変わっているため、新車の色ではなく今の周りの色に合わせること、角度や光で差が見える場合があること、ぼかしで目立たなくする方法があることを説明します。言い切る約束はしないほうが安全です。
決めて書面に書いておくと、お客様にも工場にも分かりやすくなります。民法第637条では、お客様は不適合を知った時から1年以内に通知する必要があるとされていますが、自社の保証として期間とやり直しの範囲を示しておくと、申し出の受け方がそろいます。
日本損害保険協会のガイドラインでは、工場と保険会社の間に民法上の契約関係はないとされています。仕上がりの話し合いの相手はお客様です。保険会社と決めた範囲を超える作業は、自費の見積として分けて説明します。
車両ごとに、入庫時、作業中、修理後の写真と、見積や作業指示書をまとめて残します。再来店のときにすぐ探せるよう、自動車整備ソフトなどで顧客と車両の履歴として管理しておくと便利です。日本カーネットの「整備システム・整備ソフト DREAM POWER」は、顧客と車両の管理、見積や請求の作成に対応しています。選び方は整備ソフト おすすめの比較とあわせて、鈑金工場の業務管理システムをご覧ください。
記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。個別のクレームや契約の判断は、弁護士や消費生活センターなどの専門の窓口にご確認ください。
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