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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > 有機溶剤作業主任者とは|鈑金塗装工場で選任が必要な条件と技能講習・職務
鈑金塗装工場で、屋内の塗装ブースや作業場で溶剤系の塗料やシンナーを使い、従業員に塗装やガンの洗浄をさせるなら、有機溶剤作業主任者の選任が必要になる場合がほとんどです。根拠は労働安全衛生法第14条と、有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)第19条です。選任できるのは、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関が行う有機溶剤作業主任者技能講習を修了した人に限られます。
この記事では、鈑金塗装工場で選任が必要になる条件、第1種から第3種までの有機溶剤の区分、技能講習の受け方と日数、作業主任者の職務、選任しなかった場合の罰則を、e-Gov法令検索で確かめた条文に沿って説明します。開業前に誰に講習を受けてもらうかを決める材料にしてください。
有機溶剤作業主任者は、有機溶剤を扱う作業の現場で、作業のやり方を決めて従業員を指揮し、換気装置の点検や保護具の使用状況の確認を受け持つ人です。資格の名前に「主任者」とありますが、国家試験に合格して取る免許とは違い、技能講習を修了したうえで、事業者が作業ごとに選任して初めて役目が生じます。
選任した後は、作業主任者の氏名と、その人に任せる事項を作業場の見やすい場所に掲示するなどして、従業員に知らせる必要があります(労働安全衛生規則第18条)。塗装ブースの近くに札を掲げておけば足ります。
有機溶剤作業主任者は「技能講習の修了者から事業者が選ぶ」役目
有機溶剤作業主任者とは、屋内作業場などで有機溶剤を扱う作業について、労働安全衛生法第14条と有機溶剤中毒予防規則第19条にもとづき事業者が選任する現場の責任者です。選任できるのは、都道府県労働局長の登録を受けた教習機関が行う有機溶剤作業主任者技能講習を修了した人だけで、講習は学科のみ、科目は健康障害と予防措置、作業環境の改善方法、保護具、関係法令の4つです(有機則第37条)。選任したら、氏名と行わせる事項を作業場に掲示して従業員に知らせます(労働安全衛生規則第18条)。鈑金塗装工場では、溶剤系塗料の吹付けとスプレーガンの洗浄が主な対象作業になります。
判断の材料は3つです。使う物、作業の場所、作業の種類で決まります。
有機則第1条では、労働安全衛生法施行令別表第6の2に挙げられた有機溶剤と、有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含む混合物をまとめて「有機溶剤等」と呼びます。別表第6の2には、補修塗装の塗料やシンナーに使われることの多いトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ノルマル-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどが並んでいます。溶剤系の塗料やシンナーの多くは、この「有機溶剤等」に当たると考えて準備するのが現実的です。
労働安全衛生法施行令第6条第22号は、屋内作業場やタンク、船倉、坑の内部などで有機溶剤を製造し、または取り扱う業務を作業主任者の対象にしています。建屋の中の塗装ブースは屋内作業場です。有機則第1条第2項では、車両の内部や通風が不十分な場所も同じ扱いにしています。
有機則第1条第1項第6号は「有機溶剤業務」を列挙しており、鈑金塗装工場に関係が深いのは次の業務です。
有機則第19条第1項は、これらの有機溶剤業務(試験・研究の業務を除く)を作業主任者の対象としたうえで、次に説明する消費量が少ない場合の適用除外に当たるものだけを外しています。
屋内で溶剤系塗料を吹き付ける工場は、選任が必要と考えて準備する
鈑金塗装工場で有機溶剤作業主任者の選任が必要になるのは、有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含む塗料やシンナーを、屋内作業場などで塗装、洗浄、払しょく、乾燥などに使う場合です(労働安全衛生法施行令第6条第22号、有機則第1条・第19条)。トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトンなどは施行令別表第6の2に載っている有機溶剤で、補修塗装の溶剤系塗料やシンナーの多くが当てはまります。建屋の中の塗装ブースで吹き付ける工場は、ほぼ対象になると考えて開業前から講習の受講を計画するのが安全です。使う製品が該当するかは、安全データシート(SDS)の成分と含有量で確かめます。
区分は3つです。有機溶剤等は、有害性の強さによって第1種から第3種に分かれます。区分によって、必要な換気設備や、消費量が少ない場合の適用除外の計算式が変わります。
| 区分 | 主な物質(施行令別表第6の2) | 作業場での表示色(有機則第25条) |
|---|---|---|
| 第1種有機溶剤等 | 1,2-ジクロルエチレン、二硫化炭素と、これらを5%を超えて含む混合物 | 赤 |
| 第2種有機溶剤等 | アセトン、イソプロピルアルコール、キシレン、酢酸エチル、酢酸ノルマル-ブチル、トルエン、メチルエチルケトンなど | 黄 |
| 第3種有機溶剤等 | ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ミネラルスピリットなど、第1種・第2種以外 | 青 |
中心は第2種です。有機則第5条は、屋内作業場で第1種または第2種の有機溶剤等を使う業務について、発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置のいずれかを設けるよう定めています。塗装ブースの選び方は塗装ブースの選び方で詳しく説明しています。
有機則第2条には、タンクの内部以外の屋内作業場で、1時間に消費する有機溶剤等の量が「許容消費量」を超えない場合に、作業主任者の選任などを適用しない規定があります。第2種有機溶剤等の許容消費量はW=(2/5)×A(Wはグラム、Aは作業場の気積で、床から4メートルを超える部分を除き、150立方メートルを超えるときは150として計算)です。気積が150立方メートル以上の作業場でも上限は60グラムで、吹付塗装を日常的に行う工場で収まる量とは考えにくく、この除外に頼る前提で計画を立てるのは避けたほうが無難です。
キシレン系の溶剤にはエチルベンゼンが含まれていることがあります。エチルベンゼンを重量の1パーセントを超えて含む物を屋内作業場などで使って行う塗装は「エチルベンゼン塗装業務」として、特定化学物質障害予防規則(以下、特化則)の特別有機溶剤業務に当たります。この場合の作業主任者は特定化学物質作業主任者という名前になりますが、特化則第27条により、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任します。塗装工場の化学物質規制全体は塗装工場の特定化学物質と化学物質の自律的な管理にまとめました。
補修塗装の溶剤は第2種が中心、エチルベンゼンは特化則でも講習は同じ
有機溶剤等は有機則第1条で第1種から第3種に分かれ、トルエン、キシレン、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンなど補修塗装でよく使われる溶剤は第2種に当たります。屋内で第1種・第2種を使う業務には、局所排気装置やプッシュプル型換気装置などの設置が必要です(有機則第5条)。消費量が少ない場合の適用除外もありますが、第2種の許容消費量は気積150立方メートルで1時間60グラムが上限で、吹付塗装の工場では使いにくい規定です。またエチルベンゼンを1パーセントを超えて含む塗料での屋内塗装は特化則の特別有機溶剤業務となり、作業主任者は有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選びます(特化則第27条)。区分は作業場に赤・黄・青で表示します。
有機溶剤作業主任者技能講習は、有機則第37条により学科講習だけで行われ、実技はありません。科目は次の4つです。
実施は登録教習機関です。東京労働基準協会連合会の案内では、2日間の日程で講義を受け、2日目の最後に修了試験があり、合格すると修了証が交付されます。受講料や開催日、申し込みの締め切りは教習機関ごとに違うため、所在地の労働局のホームページに載っている登録教習機関の一覧から探して、直接確かめてください。
誰が受けるか。毎日塗装ブースに入る職人か、塗装の工程を管理する人が自然です。作業主任者が休んだり辞めたりすると、その間は選任のない状態になります。開業時は経営者自身と塗装担当の2人が受講しておくと、休みの日の作業にも対応できます。
技能講習は学科のみ・2日間が目安、受講者は2人いると安心
有機溶剤作業主任者技能講習は、有機則第37条により学科講習だけで行われ、健康障害と予防措置、作業環境の改善方法、保護具、関係法令の4科目を学びます。実施するのは都道府県労働局長の登録を受けた教習機関で、東京労働基準協会連合会の案内では2日間の講義の最後に修了試験があり、合格者に修了証が交付されます。受講料や日程は教習機関ごとに違うので、所在地の労働局が公表している登録教習機関の一覧から申し込み先を探します。作業主任者が不在の日は選任のない作業になってしまうため、鈑金塗装工場では経営者と塗装担当の2人が修了しておくと、休日や退職のときにも作業を止めずに済みます。
職務は有機則第19条の2で決まっています。
| 職務 | 鈑金塗装工場での具体例 |
|---|---|
| 作業の方法を決定し、労働者を指揮する | 塗装ブースの排気を入れてから吹き始める、ガンの洗浄は排気のある場所で行う、と手順を決めて守らせる |
| 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、全体換気装置を1か月を超えない期間ごとに点検する | ブースのファンの動き、フィルターの目詰まり、ダクトの緩みを毎月確かめて記録する |
| 保護具の使用状況を監視する | 防毒マスクの吸収缶の交換時期、手袋や保護めがねの着用を確かめる |
| タンクの内部で作業するときの措置の確認 | 鈑金塗装工場では通常あまりない作業 |
作業主任者の月1回の点検とは別に、事業者には局所排気装置とプッシュプル型換気装置の1年以内ごとの定期自主検査(有機則第20条・第20条の2)と、その記録の3年間保存(同第21条)が求められています。作業場には、有機溶剤による疾病の種類と症状、取扱い上の注意、中毒が起きたときの応急処置などの掲示も必要です(同第24条)。
作業主任者の仕事は「手順を決める・月1回点検・保護具を見る」の3つ
有機溶剤作業主任者の職務は有機則第19条の2で決まっており、鈑金塗装工場で中心になるのは、従業員が有機溶剤を吸い込まないよう作業の方法を決めて指揮すること、局所排気装置やプッシュプル型換気装置を1か月を超えない期間ごとに点検すること、保護具の使用状況を監視することの3つです。これとは別に、事業者は換気装置の定期自主検査を1年以内ごとに1回行い、記録を3年間保存します(有機則第20条・第21条)。作業場の見やすい場所には、有機溶剤で起こりうる病気と症状、取扱いの注意、応急処置を掲示します(同第24条)。点検表を塗装ブースの横に下げておくと、記録漏れを防げます。
作業主任者を選任しなければならない作業で選任しなかった場合は、労働安全衛生法第14条の違反になり、同法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。中毒などの事故が起きれば、未選任は事業者の責任として問われます。
一人親方の場合はどうでしょうか。作業主任者の選任や特殊健康診断の義務は、労働者を使用する事業者にかかるものです。従業員を雇わず一人で作業する場合でも、有機溶剤の害が変わるわけではないので、換気と保護具の扱いは同じ水準で考えておくほうが安全です。有機則には、作業の一部を請負人に任せるときの周知の義務も入っています(第30条の4第2項など)。
有機溶剤を使う作業者には、6か月以内ごとの特殊健康診断も必要です。詳しくは有機溶剤の健康診断で説明しています。開業時の届出全体は板金塗装の開業に必要な届出・手続き一覧、資格全体は板金塗装に資格は必要かをご覧ください。
未選任は6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
有機溶剤作業主任者を選任すべき作業で選任しなかった場合、労働安全衛生法第14条の違反となり、同法第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。選任の義務は労働者を使用する事業者にかかるため、鈑金塗装工場で最初の従業員を雇うときが、講習の修了者をそろえる最後の期限と考えておくとよいでしょう。作業主任者の不在は、労働基準監督署の臨検での指摘につながるだけでなく、有機溶剤による中毒が起きたときに事業者の安全配慮が問われる材料にもなります。特殊健康診断、作業環境測定、換気装置の定期自主検査とあわせて、年間の予定表に入れて管理します。
ありません。有機則第37条により学科講習だけで、健康障害と予防措置、作業環境の改善方法、保護具、関係法令の4科目を受け、修了試験に合格すると修了証が交付されます。
人数の下限はありません。屋内作業場で有機溶剤業務に労働者を従事させるなら、1人でも作業主任者の選任が必要です。消費量が少ない場合の適用除外(有機則第2条)は、吹付塗装を行う工場では当てはまりにくい規定です。
水性塗料でも、有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含めば有機則の「有機溶剤等」に当たります。製品ごとにSDSで含有量を確かめてください。水性塗料については自動車補修の水性塗料で説明しています。
自動車整備システムや自動車整備ソフトは、顧客、車両、見積、請求の管理が中心で、作業主任者の点検記録や健康診断の管理は別の台帳で行うのが一般的です。工場の業務全体の管理は鈑金工場の業務管理システムをご覧ください。
記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。許認可や法令の個別の判断は、所管の官庁・自治体・専門家にご確認ください。
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