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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > 特定化学物質と塗装工場|特化則と2024年4月からの化学物質の自律的な管理・SDSの確認
特定化学物質とは、労働安全衛生法施行令別表第3に挙げられた、がんや重い健康障害を起こすおそれのある化学物質で、特定化学物質障害予防規則(以下、特化則)で設備、作業主任者、健康診断などのルールが決められています。鈑金塗装工場では、キシレン系の溶剤に含まれることがあるエチルベンゼンを使った屋内の塗装や、溶接で出る溶接ヒュームが、特化則に関係する代表的な作業です。
さらに2024年4月からは、特化則などの個別の規則に載っていない物質も含めて、事業者が自分でリスクを見積もって対策を決める「化学物質の自律的な管理」が本格的に始まりました。この記事では、塗装工場に関係する化学物質規制の全体像と、使っている塗料の成分が規制に当たるかをSDS(安全データシート)で確かめる手順を説明します。どの塗料がどの規制に当たるかは製品ごとに違うため、ここでは断定せず、確かめ方を中心に書いています。
労働安全衛生法施行令別表第3は、特定化学物質を3つに分けています。
| 区分 | 主な物質の例(施行令別表第3) |
|---|---|
| 第1類物質 | ジクロルベンジジン、塩素化ビフェニル(PCB)、ベリリウムなど(製造に許可が必要な物質) |
| 第2類物質 | エチルベンゼン、クロム酸及びその塩、重クロム酸及びその塩、スチレン、ジクロロメタン、トリレンジイソシアネート、メチルイソブチルケトン、溶接ヒュームなど |
| 第3類物質 | アンモニア、一酸化炭素、塩化水素、硫酸など(大量漏えいによる急性中毒を防ぐ物質) |
第2類物質のうち、エチルベンゼン、スチレン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタンなど一部の物質は「特別有機溶剤」と呼ばれ、有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)の換気などの規定を準用する形で管理します(特化則第38条の8)。
特定化学物質は施行令別表第3の物質、塗装工場では第2類が中心
特定化学物質とは、労働安全衛生法施行令別表第3に挙げられた化学物質で、特定化学物質障害予防規則で設備、作業主任者、作業環境測定、健康診断などが定められています。第1類はPCBやベリリウムなど製造に許可が要る物質、第2類はエチルベンゼン、クロム酸塩、スチレン、トリレンジイソシアネート、メチルイソブチルケトン、溶接ヒュームなど、第3類はアンモニアや一酸化炭素など大量漏えいに備える物質です。鈑金塗装工場に関係しやすいのは第2類で、エチルベンゼンやスチレンなどの「特別有機溶剤」は有機則の規定を準用して管理します(特化則第38条の8)。自分の工場で使う製品に含まれるかは、SDSの成分欄で確かめます。
特化則第2条の2は、エチルベンゼンを重量の1パーセントを超えて含む物を屋内作業場等で使って行う塗装の業務を「エチルベンゼン塗装業務」とし、特別有機溶剤業務に含めています。該当すると、次のような対応が必要です。
作業主任者の講習は有機溶剤と共通です。有機溶剤作業主任者とはと有機溶剤の健康診断もあわせて確かめてください。
溶接ヒュームは施行令別表第3の第2類物質です。特化則第38条の21は、金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場について、全体換気装置による換気などで溶接ヒュームを減らすこと、作業方法を新たに採用・変更するときに労働者の身体に試料採取機器を着けた測定で濃度を測ること、有効な呼吸用保護具を使わせること、面体のある保護具は1年以内ごとに装着の確認(フィットテスト)をして記録を3年間保存すること、床を毎日1回以上水洗いなどで掃除することを定めています。作業主任者は、金属アーク溶接等作業主任者限定技能講習の修了者から選ぶこともできます(特化則第27条第2項)。
エチルベンゼン塗装と溶接ヒュームが鈑金塗装工場の2大論点
鈑金塗装工場で特化則がかかりやすいのは、エチルベンゼンを重量の1パーセントを超えて含む塗料やシンナーでの屋内塗装と、鈑金の金属アーク溶接で出る溶接ヒュームの2つです。エチルベンゼン塗装業務は特別有機溶剤業務で、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から特定化学物質作業主任者を選び、6か月以内ごとの健診と30年間の記録保存が必要です。溶接ヒュームは特化則第38条の21により、全体換気、作業方法を変えるときの個人ばく露による濃度測定、呼吸用保護具の使用、1年以内ごとのフィットテストと記録の3年保存、毎日の床の掃除が求められます。どちらも開業時の設備と人の手配に関わるので、早めに洗い出します。
労働安全衛生規則の改正(令和4年厚生労働省令第91号)で、特化則や有機則に載っていない物質を含め、危険性・有害性が分かっている化学物質を幅広く「リスクアセスメント対象物」として、事業者が自分でリスクを見積もり、対策を決める仕組みになりました。厚生労働省の資料では、改正は公布日、2023年4月1日、2024年4月1日に分けて施行されています。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 化学物質管理者 | リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う事業場ごとに、選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任し、ラベル・SDSの確認、リスクアセスメント、ばく露防止措置、記録の作成などを管理させる。製造しない事業場では、必要な能力を有すると認められる者から選ぶ | 安衛則第12条の5 |
| 保護具着用管理責任者 | リスクアセスメントの結果にもとづき保護具を使わせるとき、14日以内に選任し、保護具の選択、使用、保守管理を任せる | 安衛則第12条の6 |
| ばく露の最小化と濃度基準値 | 代替物、換気、作業方法、保護具などでばく露を最小限にし、厚生労働大臣が定める物質は濃度基準値以下にする | 安衛則第577条の2 |
| 皮膚等障害化学物質 | 皮膚や眼に障害を与える、または皮膚から吸収されるおそれが明らかな物には、不浸透性の保護衣、保護手袋、履物、保護眼鏡などを使わせる(2024年4月1日施行) | 安衛則第594条の2 |
キシレンは、リスクアセスメント対象物の一覧である安衛則別表第2にも載っています。つまり補修塗装の溶剤系塗料を使う工場の多くは、有機則に加えて、この自律的な管理の対象にもなると考えておくのが自然です。対象物質は改正のたびに追加されているので、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」や化学物質規制のページで最新の一覧を確かめてください。
化学物質管理者と保護具着用管理責任者は事由発生から14日以内に選任
化学物質の自律的な管理とは、2023年4月と2024年4月に施行された労働安全衛生規則の改正で始まった、リスクアセスメント対象物について事業者がリスクを見積もり、自ら対策を選ぶ仕組みです。リスクアセスメント対象物を取り扱う事業場は、化学物質管理者を事由の発生から14日以内に選任し(安衛則第12条の5)、リスクアセスメントの結果で保護具を使わせるなら保護具着用管理責任者も14日以内に選びます(第12条の6)。ばく露は代替物、換気、保護具などで最小限にし(第577条の2)、皮膚等障害化学物質には不浸透性の手袋や保護眼鏡を使わせます(第594条の2)。キシレンは安衛則別表第2の対象物なので、溶剤系塗料を使う鈑金塗装工場の多くが当てはまります。
どの塗料がどの規制に当たるかは、同じ種類の製品でもメーカーや配合で変わります。決め手はSDSです。リスクアセスメント対象物を譲渡・提供する事業者には、SDSで成分と含有量を通知する義務があり、含有量は物質ごとに重量パーセントで示すことになっています(安衛則第34条の2の6)。
リスクアセスメントは、対象物を新しく採用・変更するとき、作業の方法や手順を新しく採用・変更するときなどに行います(安衛則第34条の2の7)。記録は、次のリスクアセスメントまでの期間(3年以内に次を行ったときは3年間)保存します。塗料の銘柄を変えたときも、SDSを取り寄せ直すところから始めます。
SDSの「組成」と「適用法令」の2欄を見れば、当たる規制が分かる
塗料やシンナーが特化則、有機則、自律的な管理のどれに当たるかは、製品のSDSで確かめます。リスクアセスメント対象物の成分は、物質ごとの重量パーセントで通知することになっており(安衛則第34条の2の6)、「組成及び成分情報」でエチルベンゼンが1パーセントを超えるか、有機溶剤の合計が5パーセントを超えるかが分かります。「適用法令」の欄には、有機則の区分、特化則の該当、消防法の品名が書かれています。確かめた結果をもとにリスクアセスメントを行い、物質名、業務、結果、措置を記録して従業員に周知します(第34条の2の8)。銘柄を変えるとき、作業手順を変えるときは、そのたびにやり直します。
開業したばかりの鈑金塗装工場で、すべてを一度に整えるのは大変です。順番を決めて進めると無理がありません。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 開業前 | 使う予定の製品のSDSを集め、成分と適用法令の一覧表を作る。塗装ブースの換気方式を決める(塗装ブースの選び方) |
| 最初の従業員を雇う前 | 有機溶剤作業主任者技能講習を受け、化学物質管理者と保護具着用管理責任者を決める |
| 雇い入れ時 | 雇入れ時教育で、使う化学物質の危険性と保護具の使い方を教える。特殊健康診断を受けさせる |
| その後 | 作業環境測定、健診、換気装置の点検の予定を年間表に入れる。銘柄変更のたびにSDSとリスクアセスメントを見直す |
保護手袋は、溶剤によって透過しやすい材質があります。厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」(第3版、2026年3月)に、材質ごとの耐透過性能の考え方がまとめられているので、手袋を選ぶときの参考になります。開業時の届出全体は板金塗装の開業に必要な届出・手続き一覧をご覧ください。
開業前にSDS一覧、雇用前に責任者の選任、と段階で備える
鈑金塗装工場が特定化学物質と化学物質の自律的な管理に備えるには、開業前に使う予定の塗料、硬化剤、シンナー、脱脂剤のSDSを集めて成分と適用法令の一覧を作り、最初の従業員を雇う前に有機溶剤作業主任者技能講習の受講と、化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任を済ませる順番が無理のない進め方です。雇い入れ時には教育と特殊健康診断を行い、その後は作業環境測定、健診、換気装置の点検を年間の予定に組み込みます。保護手袋は溶剤ごとに透過しやすさが違うため、厚生労働省の「皮膚障害等防止用保護具の選定マニュアル」第3版(2026年3月)を参考に材質を選びます。銘柄を変えたらSDSから見直します。
化学物質管理者の選任は、労働者を使用する事業者の義務です。一人で作業する場合も、SDSで成分を確かめて換気と保護具をそろえる考え方は同じなので、雇用を始める前に準備しておくと移行が楽になります。
リスクアセスメント対象物を製造する事業場では、厚生労働大臣が定める講習の修了者などから選びます。製造せず取り扱うだけの事業場では、必要な能力を有すると認められる者から選ぶとされています(安衛則第12条の5第3項)。
仕入れ先かメーカーに請求してください。リスクアセスメント対象物を譲渡・提供する側には、SDSで通知する義務があります。古い在庫でSDSが見つからない物は、使う前に必ず取り寄せます。
自動車整備ソフトは顧客、車両、見積、請求の管理が中心で、SDSやリスクアセスメントの記録は別に保管するのが一般的です。整備ソフト 安いものを探す場合も、まず工場の伝票の流れに合うかを確かめてください。鈑金工場の業務管理システムで詳しく紹介しています。
記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。許認可や法令の個別の判断は、所管の官庁・自治体・専門家にご確認ください。
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