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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > アジャスターとは?損害保険登録鑑定人の資格と、鈑金工場が保険修理で関わる流れ
アジャスターとは、日本損害保険協会に加盟する損害保険会社から委嘱を受け、自動車の物損事故で損害額や事故の原因を調べる担当者のことで、協会に登録された人だけが名乗れます。鈑金工場が自動車保険を使う修理を受けると、見積の内容と金額をこのアジャスターと話し合って決める「協定」が入り、そこで指数と指数対応単価が使われます。
協定の進め方と見積の出し方は鈑金見積システム比較の保険会社との協定とは、工賃単価の決め方はレバーレート(指数対応単価)とはで詳しく解説しています。この記事では、開業する鈑金工場がアジャスターと付き合ううえで知っておきたい資格と流れを中心にまとめます。
この記事では、保険修理の入庫から請求までの流れ、アジャスターの資格制度、協定の考え方、指数と対応単価の意味を、開業したばかりの鈑金工場の目線で整理します。日本損害保険協会のガイドラインとアジャスター制度の資料、国土交通省が2026年6月に公表した標準作業時間の調査結果をもとにしており、出典は記事の最後に載せています。保険会社ごとの細かな運用は会社によって違うので、ここでは共通する骨組みを説明します。
自動車保険を使う修理は、お客様の車を預かってから修理代金を受け取るまでに、損害保険会社が間に入る点が自費修理と違います。おおまかな流れは次のとおりです。
保険会社から工場へ修理費が直接振り込まれる形は「直接支払」と呼ばれます。日本損害保険協会のガイドラインは、工場と損害保険会社の間に民法上の契約関係はなく、お客様の利便のために長年の慣行として行われていると説明しています。修理を頼んでいるのは、あくまでお客様です。
保険修理は「お客様の修理」を保険会社が確かめる仕組み
保険修理の流れは、入庫、損傷の確認と見積、アジャスターによる損害調査、協定、修理、納車と請求の6段階です。日本損害保険協会の「修理工賃単価に関する対話・協議のあり方にかかるガイドライン」(2025年2月17日制定)は、工場と損害保険会社の間に民法上の契約関係は存在せず、直接支払はお客様の利便のための慣行だと書いています。そのうえで、本来お客様が示すべき修理内容と修理費用の妥当性を、保険会社がお客様に代わって確かめているのが実態だとしています。工場から見ると、修理の契約相手はお客様で、保険会社は支払いの確認役という整理になります。お客様への説明、免責金額の扱い、保険の対象外の作業の請求先を、入庫の時点で決めておくと揉めにくくなります。
アジャスターは、日本損害保険協会の「アジャスター規則」に定める試験と研修を経て、協会に登録された人です。協会の資料では、加盟する保険会社の「保険事故」の損害調査業務を行う者で、協会にアジャスター登録された者、と定義されています。種類は2つあります。
| 種類 | 業務の内容(協会の資料より) |
|---|---|
| 技術アジャスター | 損害車両の損害額、事故の原因、損傷部位と事故との技術的な因果関係を調べて確認する |
| 特殊車アジャスター | 建設機械のような特殊な構造の自動車や特種な用途の自動車について、同じ調査を行う |
技術アジャスターには技能ランクがあり、制度上は見習、初級、3級、2級、1級の5つですが、協会は現在は2級までの4ランクで運用していると案内しています。登録には各ランクの試験に合格し、そのあと基礎研修を修了することが要ります。研修は株式会社自研センターが行います。
| ランク | 試験 | 上のランクへ進む条件 | 受験料(2026年度・税込) |
|---|---|---|---|
| 見習 | 筆記 | 受験要件なし | 5,590円 |
| 初級 | 筆記 | 見習登録と見習コースの研修修了 | 5,590円 |
| 3級 | 筆記と見積 | 初級登録後2年以上の実務と初級コースの研修修了 | 7,735円 |
| 2級 | 筆記と見積 | 3級登録後3年以上の実務と3級コースの研修修了 | 9,165円 |
特殊車アジャスターの受験料は11,310円です。登録は5年ごとの更新制で、有効期間が切れたときや、必要な研修を修了していないときは更新できません。
アジャスターは協会に登録された損害調査の専門職
アジャスターとは、日本損害保険協会に加盟する損害保険会社の保険事故について、損害車両の損害額、事故の原因、損傷と事故の技術的な因果関係を調べる人で、協会のアジャスター規則に沿って試験と研修を経て登録された人を指します。技術アジャスターのランクは見習、初級、3級、2級の4つで運用されており、3級へは初級登録後2年以上、2級へは3級登録後3年以上の実務が必要です。2026年度の受験料は見習と初級が5,590円、3級が7,735円、2級が9,165円(税込)で、登録は5年ごとに更新します。工場で話す相手は、車の構造と見積の付け方を学んだ人だと考えておくと準備の方向が定まります。
協定は、工場の見積とアジャスターの確認結果を突き合わせて、修理の内容と金額を決める話し合いです。話し合う項目は、おおむね次の5つです。
話し合いの土台になるのは写真と根拠です。外板を外した状態、内側のパネルの曲がり、計測の結果など、見積の行ごとに「なぜその作業が要るか」を写真で示せると、協定は早く終わります。逆に、写真が少なく見積だけを送ると、確認の電話が何度も入り、そのあいだ車がリフトや作業場所をふさぎます。
日本損害保険協会のガイドラインは、加盟する保険会社に対し、工場から工賃単価の協議を求められたら対話を行い、協議を求めたことだけを理由に不利益な扱いをしないこと、工場がレバーレートなどの根拠資料を出したら丁寧に確かめることを、取り組みの例として示しています。写真撮影の方法を案内するなど、工場側の態勢づくりを支える取り組みも挙がっています。
協定を早く終わらせるのは写真と見積の行ごとの根拠
保険修理の協定とは、工場の見積とアジャスターの損害調査の結果を突き合わせ、損傷の範囲、修理方法、部品、工賃、塗装の範囲の5つを話し合って修理費を決めることです。日本損害保険協会が2025年2月に定めたガイドラインでは、保険会社は工場から提示されたレバーレートなどの根拠資料を丁寧に確認し、見解が違う場合は争点を明確にして理由を説明する、とされています。工場の側でできる準備は、分解前と分解後の写真、内側の損傷の写真、計測の記録を見積の行と対応させてそろえることです。追加の損傷が見つかったときに作業を止めて写真と追加見積を送る手順を決めておけば、協定のやり直しにも落ち着いて対応できます。見積書の組み立て方は別の記事で詳しく説明しています。
見積書の項目の立て方、レバーレートの計算は、板金塗装の見積の作り方にまとめています。
保険修理の工賃は、一般に「標準作業時間 × 工賃単価」で計算します。国土交通省の資料でも、修理工賃は標準作業時間に、工場と損害保険会社との交渉による工賃単価を掛けたもの、と説明されています。
| 用語 | 意味 | 決まり方 |
|---|---|---|
| 指数 | 部品の脱着や取替など、作業ごとの標準的な作業時間を数値で示したもの | いわゆる「自研指数」が広く使われている。使うかどうかも含めて契約当事者に委ねられる |
| 指数対応単価(対応単価) | 指数1あたりに掛ける金額。1時間あたりの工賃単価にあたる | 工場と損害保険会社の協議で決める |
| レバーレート | 工場が人件費、設備、家賃、光熱費などから自分で計算する1時間あたりの工賃単価 | 工場が計算する。自費修理ではそのまま使える |
指数は、決められた条件の車と作業者を前提にした目安です。古い車や錆の多い車、過去に修理歴のある車では、実際の作業時間と合わないことがあります。国土交通省は、指数の時間では終えられない作業があるという工場の声を受けて、第三者の立場で標準作業時間を調べ、2026年6月に結果を公表しました。
この調査では、海外の自動車メーカーから標準作業時間の策定を請け負うドイツの会社に新たな作業時間(CAB工数)を作ってもらい、自研指数と比べました。対象はトヨタ ヤリス、レクサス IS300h、レクサス NX450h+ の3車種です。結果は、板金作業(脱着・取替)ではCAB工数が大きくなる傾向があり、塗装作業では差が小さい傾向でした。たとえばヤリスの片側クォータパネルなどの取替では、CAB工数12.1時間に対して自研指数は8.1時間でした。
国土交通省は、この調査は限られた車種と作業の参考値で、自研指数の妥当性を否定するものではなく、個別の事案で作業時間の妥当性を裏づける資料に使うのは適当でない、としています。自研センターは、リフトアップなどの付帯作業を、同時に行う別の作業の時間に含めている場合があると説明しています。協定で指数と実作業の差を話すときは、この調査の数字を持ち出すより、自社の作業の写真と記録で示すほうが筋が通ります。
指数は作業時間の目安、対応単価は協議で決める金額
指数とは、部品の脱着や取替など事故車修理の作業ごとに標準的な作業時間を示した数値で、国内ではいわゆる自研指数が広く使われています。指数対応単価は、その指数に掛ける1時間あたりの工賃単価で、工場と損害保険会社の協議で決まります。保険修理の工賃は「指数 × 対応単価」で出すのが一般的です。国土交通省が2026年6月に公表した調査では、ヤリスなど3車種の板金作業で、ドイツの会社が作ったCAB工数が自研指数より大きくなる傾向が見られ、塗装作業では差が小さい傾向でした。ただし国土交通省は参考値として扱うよう求めています。工場は、自社のレバーレートを根拠つきで計算し、対応単価の協議に備えておくのが現実的です。
開業したばかりの工場が保険修理を受けるときに、最初にそろえておきたいのは次のものです。
前方のカメラやレーダーが付いたバンパーやガラスを外す修理は、電子制御装置整備として認証が要る作業になります。エーミングと認証の考え方はエーミングと特定整備を、代車の用意は鈑金工場の代車の準備をご覧ください。
見積から納品書、請求、入金までを1台ごとにつなぐには、業務管理の仕組みがあると楽になります。日本カーネットの整備システム・整備ソフト DREAM POWERは、顧客と車両の管理、見積・請求、車検の案内などに使えます。鈑金工場での使い方は鈑金工場の業務管理システムで説明しています。開業の全体像は板金塗装で開業するにはにまとめました。
保険修理の準備は写真の型と単価の根拠から
鈑金工場が保険修理を受け始めるときに、最初に整えたいのは写真の撮り方の型と、レバーレートの計算資料の2つです。写真は全体、損傷部の近景、分解後、計測、作業後を毎回同じ順番で撮り、見積の行と対応させます。レバーレートは人件費、家賃、設備の費用、光熱費を年単位で積み上げ、作業に使える時間で割って出します。日本損害保険協会のガイドラインは、保険会社が工場の根拠資料を丁寧に確認すると定めているので、資料があれば話し合いの出発点ができます。あわせて、免責金額や保険の対象外の作業をお客様に請求する流れ、カメラやレーダーが付いた部品を外す修理の外注先も、最初の入庫の前に決めておくと慌てずに済みます。
開業準備や業務の仕組みについてのご相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。ご相談は、自動車整備・自動車販売・自動車鈑金などの事業者様に限って受け付けています。
要ります。日本損害保険協会のアジャスター規則に沿って試験に合格し、研修を修了して協会に登録される必要があります。最初は見習ランクで、受験要件はありません。2026年度の見習技術アジャスター試験の受験料は5,590円(税込)です。
争点を作業ごとに分け、写真と作業の記録で根拠を示して話し合います。日本損害保険協会のガイドラインでは、保険会社は見解が違う場合に争点を明確にして理由を説明するとされています。工賃単価そのものの協議を求めることもでき、協議を求めたことだけで不利益に扱わないことも示されています。
国土交通省の資料では、自研指数を使うかどうかも含めて契約当事者に委ねられているとされています。自費修理なら自社のレバーレートと実際の作業時間で見積を作れます。保険修理では指数を使う方法が広く使われているので、両方で金額を出せるようにしておくと話し合いが進めやすくなります。
修理を頼んでいるのはお客様なので、免責金額や協定に含まれなかった作業はお客様に請求します。入庫時に書面で伝えておくと、納車のときに揉めません。
使えます。鈑金工場で選ぶときは、鈑金見積の取り込み、保険会社とお客様への請求の分け方、合計請求と売掛管理に対応しているかを確かめてください。自動車整備システムは整備システム 比較の観点で機能を並べ、価格だけで整備ソフト 安いものを選ばないようにすると、あとからエクセルと併用になるのを防げます。
記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。保険金の支払いや協定の個別の判断は、各損害保険会社の案内をご確認ください。
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