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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > アルミ板金の難しさと必要な設備|熱・電食・工具の分離と引き受ける範囲

アルミ板金の難しさと必要な設備|熱・電食・工具の分離と引き受ける範囲

公開日:2026年10月24日 / 更新日:2026年10月24日 / 執筆:日本カーネット株式会社

アルミ板金は、熱・電食・加工の3つの性質で鉄と同じ道具と手順では直せません。アルミ専用の工具と作業場所の分け方、研磨の粉じんの扱い(安衛則第261条)、引き受ける範囲を3段階で決める方法を鈑金工場向けに解説します。

アルミの板金は、鉄の板金と同じ道具と手順では直せません。アルミは熱が伝わりやすく、鉄より低い温度で溶け、叩くと硬くなって割れやすいうえ、鉄の粉が付くと「電食」と呼ばれる腐食が起きます。そのため、アルミ専用の工具と作業場所を用意し、引き受ける修理の範囲を先に決めておくのが現実的です。

この記事では、アルミボディやアルミパネルの板金が難しい理由、必要な設備と作業場の分け方、鈑金工場がどこまで引き受けるかの決め方を整理します。修理の方法は車ごとに自動車メーカーの修理書が決めているので、作業は修理書に従ってください。研磨の粉じんの扱いは労働安全衛生規則で確かめ、出典は記事の最後に載せています。

アルミボディ・アルミパネルが使われる場所

目的は軽さです。アルミは鉄より軽いので、車を軽くするために使われています。外板では、ボンネット、フェンダー、ドア、バックドア、トランクリッドなどにアルミを使う車があります。車種によっては、骨格を含めたボディの大部分をアルミで作っているものもあります。

見た目では分かりません。入庫したら材質を確かめる習慣をつけます。磁石を当てて付かなければアルミなど鉄以外の材料の可能性が高く、正確な材質と部位ごとの修理方法は修理書で確かめます。1台の車の中に、鉄、高張力鋼板、アルミ、樹脂が混ざっているのが今の車の普通の姿です。

アルミの板金はまず「どこがアルミか」を確かめる

アルミの板金とは、アルミ合金でできたボンネット、フェンダー、ドアなどの外板や、アルミの骨格を修理する作業のことです。アルミは鉄より軽く、車を軽くする目的で外板を中心に使われ、ボディの大部分をアルミで作る車もあります。1台の中に鉄、高張力鋼板、アルミ、樹脂が混ざっているため、入庫した車は、修理する部位がどの材料かを最初に確かめます。磁石が付かない部位はアルミなど鉄以外の材料の可能性が高く、正確な材質と、板金で直せるか、交換か、どの接合方法を使うかは自動車メーカーの修理書で確認します。この確認を飛ばして鉄と同じ道具で作業すると、割れや腐食を招き、かえって修理費がふくらむおそれがあります。

アルミ板金の難しさ(熱・電食・加工の性質)

理由は3つです。

理由 起きること 現場での対策
熱の性質 熱が広がりやすく、鉄より低い温度で溶ける。加熱しても色がほとんど変わらず、温度が分かりにくい 温度を測る道具を使い、修理書が示す温度と時間の範囲で加熱する
電食(異種金属の接触による腐食) 鉄の粉や鉄の工具が触れた部分が、水分があると腐食する アルミ専用の工具と作業場所を分け、鉄の粉を持ち込まない
加工の性質 叩くと硬くなり、割れやすくなる。鉄より形が戻りにくい 少しずつ叩き、必要なら修理書の範囲で温めて柔らかくする

このほかに、アルミの表面にはすぐに酸化した膜ができるので、溶接や接着の前には膜を落とす下準備が要ります。接合の方法も鉄と違い、メーカーによっては溶接ではなくリベットと接着剤を組み合わせる方法を指定しています。

アルミは熱・電食・加工の3つで鉄と扱いが変わる

アルミの板金が鉄より難しい理由は、熱の性質、電食、加工の性質の3つです。アルミは熱が広がりやすく、鉄より低い温度で溶けるのに、加熱しても色がほとんど変わらないため、知らないうちに温めすぎて材料を傷めることがあります。電食は、鉄の粉や鉄の工具が触れた部分に水分が加わって起きる腐食で、作業のときに付いた鉄粉が、しばらくたってから塗装の下でふくれや腐食になって現れます。加工の面では、叩くと硬くなって割れやすく、鉄のように強く叩いて戻す方法は使えません。表面の酸化膜を落とす下準備も要ります。どれも鉄の板金の経験だけでは気づきにくいので、修理書と材料の特性を確かめてから作業に入ります。

アルミ板金に必要な設備と工具の分離

混ぜない。これが一番大事です。工具を分け、場所を分け、粉じんを分けます。

必要な機器は車ごとに違います。メーカーによっては、アルミボディの修理に使う工具や機器、研修の受講を、修理する工場の条件として示している場合があります。修理書と販売店の案内を確かめてからそろえると、使わない設備を買わずに済みます。中古で設備をそろえる考え方は鈑金塗装の設備を中古で揃えるにまとめています。

アルミ板金は工具・場所・粉じんの3つを鉄と分ける

アルミ板金に必要な設備の考え方は、工具、場所、粉じんの3つを鉄の作業と分けることです。ハンマーやドリーなどの手工具、サンダーやディスクなどの研磨工具は、アルミ専用のものを用意し、鉄に使ったものを流用しません。鉄を削ったディスクでアルミを削ると、鉄粉が表面に埋まり、あとで電食の原因になるからです。凹み出しにはアルミ用のスタッド溶接機などを使い、修理書が溶接を認める部位にはアルミ用の溶接機を、リベットと接着を指定する部位にはリベットの工具を使います。加熱の温度を測る道具と、アルミの粉を鉄の粉と分けて集める集じん機もそろえます。必要な機器は車と部位で変わるため、修理書を見てから買うと無駄がありません。

アルミ板金の作業場の区分と粉じんの扱い

工具だけでは足りません。同じ場所で鉄を削っていれば、舞った鉄粉がアルミに付きます。アルミの作業は、仕切りやカーテンで区切った場所で行い、鉄の研磨や溶接をする場所から離します。作業者の服や手袋に付いた鉄粉も持ち込まないようにします。

火災にも注意します。アルミの研磨で出る細かい粉は燃えやすい粉じんです。労働安全衛生規則第261条は、可燃性の粉じんがあって爆発や火災のおそれがある場所で、通風、換気、除じんなどの措置を求めています。第279条は、そのような場所で火花やアークを出す機械や火気を使うことを禁じています。鉄の研磨の火花がアルミの粉にかからないよう場所を分け、集じん機はアルミの粉に使えるかを販売元に確かめてください。

アルミの作業場所は鉄の研磨と溶接から離して区切る

アルミ板金の作業場の区分とは、アルミの作業を仕切りやカーテンで区切った専用の場所で行い、鉄を削る場所や溶接する場所から離すことです。工具を分けても、同じ空間で鉄を研磨すれば舞った鉄粉がアルミに付き、電食の原因になります。もう一つの理由は火災の防止です。アルミの研磨で出る細かい粉は燃えやすく、労働安全衛生規則第261条は可燃性の粉じんで爆発や火災のおそれがある場所に通風、換気、除じんなどの措置を求め、第279条はそうした場所で火花やアークを出す機械や火気の使用を禁じています。鉄の研磨の火花がアルミの粉に届かない配置にし、集じん機はアルミの粉に使える仕様かを販売元に確かめます。作業着や手袋の鉄粉も持ち込まないようにします。

アルミ板金を引き受ける範囲の決め方

アルミの車を受けるかどうかは、全部受ける、全部断る、の二択で考えなくてかまいません。損傷の場所と修理の方法で、引き受ける範囲を段階に分けて決めます。

段階 修理の内容 必要なもの
1 アルミ外板の擦り傷の塗装、ボルトで止めたアルミパネルの交換 塗装の設備。研磨工具はアルミ専用に
2 アルミ外板の小さな凹みの板金 アルミ専用の手工具、凹み出しの機器、区切った作業場所
3 溶接やリベットで付いたアルミ部品の交換、骨格の修理 修理書が求める機器と研修。メーカーの条件を満たすこと

始め方の例です。開業したばかりの工場なら、段階1と2を自社で受け、段階3は設備と研修のある工場に外注する、という分け方が無理のない始め方です。アルミの作業は鉄より時間がかかることが多いので、作業時間を記録しておくと、自費修理の見積や保険修理の協定で根拠になります。見積の組み立て方は板金塗装の見積の作り方で、保険修理の協定はアジャスターとは?保険修理の流れと協定で説明しています。高張力鋼板の扱いと溶接の使い分けはスポット溶接とはをご覧ください。

引き受ける範囲は3段階に分けて決める

アルミ板金を引き受ける範囲は、損傷の場所と修理の方法で3段階に分けると決めやすくなります。段階1はアルミ外板の擦り傷の塗装と、ボルトで止めたアルミパネルの交換で、研磨工具をアルミ専用にすれば多くの鈑金工場で受けられます。段階2はアルミ外板の小さな凹みの板金で、専用の手工具、凹み出しの機器、区切った作業場所が要ります。段階3は溶接やリベットで付いたアルミ部品の交換と骨格の修理で、修理書が求める機器と研修、メーカーが示す条件を満たす必要があります。開業直後は段階1と2を自社で受け、段階3は外注にすると、設備の投資を抑えながらアルミの車を断らずに済みます。作業時間は鉄より長くなりやすいので、記録を見積の根拠にします。

設備の選び方や開業準備のご相談は、お問い合わせフォームからどうぞ。ご相談は、自動車整備・自動車販売・自動車鈑金などの事業者様に限って受け付けています。

よくある質問

アルミのボンネットの凹みは板金で直せますか?

直せる場合があります。小さな凹みなら、アルミ専用の工具と凹み出しの機器を使います。叩くと硬くなって割れやすいので、少しずつ戻します。損傷が大きい場合や修理書が交換を指定している場合は交換します。

鉄の板金で使っている工具をアルミに使ってもかまいませんか?

使いません。鉄に使った工具やディスクには鉄粉が付いていて、アルミに移ると電食の原因になります。手工具、研磨工具、集じん機はアルミ専用に分けます。

アルミの部品は溶接で付け直せますか?

車しだいです。メーカーの修理書が、溶接、リベットと接着剤の組み合わせなど、部位ごとの接合方法を決めているので、修理書の指定に従ってください。

アルミの研磨の粉はどう扱えばよいですか?

燃えやすい粉じんとして扱い、鉄の研磨の火花が届かない場所で作業し、集じん機で集めます。労働安全衛生規則第261条は、可燃性の粉じんで爆発や火災のおそれがある場所に通風、換気、除じんなどの措置を求めています。

アルミ板金の作業記録を整備ソフトで残せますか?

はい。日本カーネットの整備システム・整備ソフト DREAM POWERは、顧客と車両の管理、見積・請求に使え、修理の内容を車両ごとの履歴に残せます。整備ソフト おすすめや整備システム 比較の情報を見るときは、作業の記録を見積の根拠として後から探せるかも確かめてください。

出典・参考資料

記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。修理の方法は自動車メーカーの修理書に従い、法令の個別の判断は所轄の労働基準監督署などにご確認ください。

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