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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > 自動車補修の水性塗料|溶剤塗料との違い・乾燥設備・VOC規制と切り替えの注意
自動車の補修塗装で使う水性塗料は、塗料を薄める溶媒の主成分を水にした塗料です。溶剤塗料に比べて塗装中に空気中へ出る揮発性有機化合物(VOC)を減らせる一方、乾燥は水の蒸発に頼るため、ブース内の風と温度・湿度の管理が仕上がりと作業時間を左右します。切り替えるときは、塗料だけでなく乾燥設備、スプレーガン、洗浄の方法、調色の仕組みまで見直すことになります。
この記事では、鈑金塗装で開業する人や、溶剤塗料からの切り替えを考えている工場に向けて、水性塗料と溶剤塗料の違い、必要な乾燥設備の考え方、大気汚染防止法のVOC規制の対象規模、切り替えるときの注意点を、e-Gov法令検索で確かめた条文に沿って説明します。
補修塗装の塗膜は、下地(サフェーサー)、色の層(ベースコート)、上塗り(クリアー)を重ねて作ります。水性塗料はこのうち色の層に使われることが多く、下地やクリアーは溶剤系の製品と組み合わせる構成もあります。どの層を水性にするかは塗料メーカーの製品の組み方で違うので、使う予定の塗料の技術資料で確かめます。
| 項目 | 水性塗料 | 溶剤塗料 |
|---|---|---|
| 薄める溶媒 | 水が主成分(有機溶剤を一部含む製品もある) | シンナーなどの有機溶剤 |
| 乾燥のしかた | 水の蒸発に頼るため、風と温度・湿度の影響を受けやすい | 溶剤の揮発で乾き、湿度の影響は水性ほど大きくない |
| ガンの洗浄 | 水性用の洗浄液を使う | 洗浄用シンナーを使う |
| 保管 | メーカーが指定する保管温度を守る(凍結させない) | 火気から離し、危険物の数量の範囲で保管する |
| VOC | 塗装中に出る量を減らしやすい | 溶剤の分だけ多くなりやすい |
有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)第1条では、有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含む混合物を「有機溶剤含有物」としています。水性と呼ばれる塗料でもこの割合を超えれば有機則の対象で、塗装する人の作業主任者や特殊健康診断の扱いは溶剤塗料と変わりません。消防法では、可燃性液体量が40パーセント以下で引火点が40度以上(燃焼点60度未満を除く)の塗料類は第2石油類から外れるなどの規定があり(危険物の規制に関する規則第1条の3)、水性塗料の多くは危険物の数量を減らせますが、判断は製品ごとのSDSによります。
水性塗料は溶媒が水、VOCは減るが乾燥は風と湿度に左右される
自動車補修の水性塗料とは、塗料を薄める溶媒の主成分を水にした塗料で、主にベースコート(色の層)に使われ、下地やクリアーは溶剤系の製品と組み合わせる構成もあります。溶剤塗料に比べて塗装中に出る揮発性有機化合物を減らしやすい反面、乾燥は水の蒸発に頼るため、ブース内の風と温度・湿度の管理が仕上がりを左右します。ガンの洗浄には水性用の洗浄液を使い、塗料は凍らせないよう保管します。水性でも有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含めば有機則の対象で、危険物に当たるかも危険物の規制に関する規則第1条の3とSDSで決まるので、切り替え前に全製品のSDSを確かめます。
水性塗料を使うときに、溶剤塗料の工場と最も違いが出るのが乾燥です。水は、空気が湿っていると蒸発しにくく、塗装面に風が当たると蒸発が進みます。そのため、色の層を吹いたあと、次の層を重ねる前に水分を飛ばす時間と風をどう確保するかが、作業の段取りを決めます。
必要な風量や温度、待ち時間の目安は、塗料メーカーの技術資料に書かれていることが多いので、それに合わせて設備をそろえます。塗装ブースの選び方は塗装ブースの選び方、乾燥機やコンプレッサーを中古で入れるときの確認点は鈑金塗装の設備を中古で揃えるにまとめています。
水性塗料の乾燥設備は「風を当てる」「温度と湿度を整える」の2つで考える
水性塗料の乾燥設備を考えるときの軸は、塗装面に風を当てて水の蒸発を進めることと、ブース内の温度と湿度を整えることの2つです。空気が湿っていると水は蒸発しにくく、梅雨や冬の朝などは待ち時間が延びやすくなります。そこで、塗装ブースの空気の流れと給気の温度を調整できるか、塗装面に風を当てる送風機やエアブローの器具を用意するか、温風乾燥機や赤外線の乾燥機をどの工程で使うかを決めます。送風にエアを使えば、コンプレッサーの吐出量にも余裕が必要です。風量、温度、待ち時間の目安は塗料メーカーの技術資料に書かれていることが多いので、それを先に取り寄せてから設備の見積を取ります。
大気汚染防止法は、揮発性有機化合物(VOC)の排出を、法律による規制と事業者の自主的な取組を組み合わせて減らす考え方をとっています(第17条の3)。規制の対象になるのは、一定以上の規模の「揮発性有機化合物排出施設」で、塗装に関係するものは大気汚染防止法施行令別表第1の2で次のように決められています。
| 施設 | 規模の要件 |
|---|---|
| 塗装施設(吹付塗装を行うものに限る) | 排風機の排風能力が1時間あたり100,000立方メートル以上 |
| 塗装の用に供する乾燥施設(吹付塗装と電着塗装に係るものを除く) | 送風機の送風能力が1時間あたり10,000立方メートル以上 |
吹付塗装の施設は、排風機の排風能力が1時間あたり10万立方メートル以上で初めて対象になります。乾燥施設の欄は吹付塗装に係るものを除いているので、吹付塗装の工程の乾燥は、この欄では数えません。自社の塗装ブースの排風能力は、銘板や仕様書で確かめてください。
規模の要件に届かない工場にも、事業者の責務があります。同法第17条の14は、事業者に、事業活動に伴うVOCの排出・飛散の状況を把握し、抑えるために必要な措置を講ずるよう求めています。水性塗料への切り替えや、塗着効率の高いスプレーガンの使用、塗料缶のふたを閉めるといった日々の作業は、この取組に当たります。自治体独自の取り決めがないかは、所在地の環境担当課に確かめておくと確実です。
吹付塗装施設のVOC規制は排風能力が毎時10万立方メートル以上から
大気汚染防止法のVOC規制の対象は、施行令別表第1の2の揮発性有機化合物排出施設で、吹付塗装を行う塗装施設は排風機の排風能力が1時間あたり100,000立方メートル以上、塗装の用に供する乾燥施設(吹付塗装と電着塗装に係るものを除く)は送風機の送風能力が1時間あたり10,000立方メートル以上が要件です。自社の塗装ブースがこの規模に届くかは、銘板や仕様書の排風能力で確かめます。規模に届かない工場でも、同法第17条の14により、VOCの排出・飛散の状況を把握し、抑える措置を講ずる事業者の責務があり、法は規制と自主的な取組の組み合わせで排出を減らす考え方をとっています(第17条の3)。水性塗料への切り替えは、その取組の一つです。
溶剤塗料から水性塗料へ切り替えるときは、塗料を替えるだけでは済みません。見直すことを順に挙げます。
切り替えの途中は、溶剤と水性の両方の在庫を持つ時期が出ます。溶剤塗料の在庫は危険物の数量に入るので、倍数の計算を見直してください(危険物の指定数量と少量危険物)。シンナーの値上がりや品薄への備えとしての考え方は塗料・シンナーの品薄と値上がりへの備えにあります。
切り替えは塗料・乾燥・ガン・調色・洗浄の5点を同時に見直す
溶剤塗料から水性塗料への切り替えで見直すのは、塗料そのもの、乾燥の設備と段取り、スプレーガン、調色の配合データと原色、洗浄液と廃液の処理の5点です。まず全製品のSDSを取り寄せて有機則と消防法の扱いを確かめ、塗料メーカーの技術資料で乾燥の条件、ガンの口径と使用圧力、希釈のしかたを確かめます。洗浄で出る廃液は排水に流さず、処理業者と区分を確かめて委託します。職人が水性の吹き方と乾燥の待ち時間に慣れるまでの練習期間も必要です。切り替えの途中は溶剤と水性の在庫が並ぶため、溶剤の分の危険物の倍数を計算し直し、材料費が変わるなら見積の単価も見直します。開業前なら、最初から水性で設備を組む選択肢もあります。
有機溶剤を重量の5パーセントを超えて含む製品は有機則の対象のままです。下地やクリアー、洗浄にシンナーを使う工程が残る場合も同じです。有機溶剤作業主任者とはをご覧ください。
製品によります。可燃性液体量や引火点などの条件で危険物から外れる塗料類がありますが(危険物の規制に関する規則第1条の3)、判断は製品ごとのSDSの適用法令欄で行います。
吹付塗装の塗装施設は、排風機の排風能力が1時間あたり10万立方メートル以上で揮発性有機化合物排出施設になります。届かない場合も、VOCの排出を抑える事業者の責務(第17条の14)はあります。
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記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。許認可や法令の個別の判断は、所管の官庁・自治体・専門家にご確認ください。
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