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自動車鈑金塗装の開業支援 > 開業コラム > スプレーガンの選び方|補修塗装の重力式・吸上式、口径とコンプレッサー容量
自動車の補修塗装に使うスプレーガンは、塗料の送り方(重力式・吸上式・圧送式)、霧化の方式(低圧タイプか従来型か)、ノズルの口径の3つで選びます。そのうえで、ガンが必要とする空気量をエアコンプレッサーがまかなえるかを確かめるのが順番です。ガンだけ良い物を買っても、空気が足りなければ塗装面は荒れます。
この記事では、鈑金塗装で開業する人に向けて、スプレーガンの方式と口径の選び方、エアコンプレッサーの容量の考え方、毎日の手入れと洗浄にかかわる法令の注意点をまとめました。特定のメーカー名や製品名は挙げず、カタログのどこを見ればよいかを中心に説明します。設備全体を中古でそろえる考え方は鈑金塗装の設備を中古で揃えるにあります。
スプレーガンは、塗料をガンへ送る仕組みで3つに分かれます。補修塗装で多く使われるのは重力式です。
| 方式 | しくみ | 向いている作業 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 重力式 | ガンの上に塗料カップがあり、塗料の重さで流れ落ちる | パネル単位の補修、少量の塗料を使い切る作業 | カップが上にあるため、大容量にすると重くなる |
| 吸上式 | ガンの下にカップがあり、空気の流れで塗料を吸い上げる | カップ容量が大きく、広い面を続けて吹く作業 | カップの底に塗料が残りやすく、粘度の影響を受けやすい |
| 圧送式 | タンクやポンプで塗料に圧力をかけてホースで送る | 大型車や大量の塗装、ライン作業 | 設備が大がかりで、洗浄に使う溶剤も増える |
開業したばかりの鈑金塗装工場で扱う乗用車の補修なら、重力式を主力にする工場が多いはずです。1台分の塗料を使い切りやすく、色替えのたびの洗浄も短く済みます。大型車や全塗装の仕事が多いなら、吸上式や圧送式も検討の対象になります。
乗用車の補修塗装は重力式が主力になりやすい
スプレーガンの方式は、ガンの上のカップから塗料の重さで流す重力式、下のカップから空気の流れで吸い上げる吸上式、タンクやポンプで圧力をかけて送る圧送式の3つです。乗用車のパネル単位の補修が中心の鈑金塗装工場では、少量の塗料を使い切りやすく、色替えのたびの洗浄も短く済む重力式を主力にするのが一般的な組み方です。吸上式はカップ容量を大きくできるので広い面を続けて吹く作業に、圧送式は大型車や大量の塗装に向きますが、設備が大きくなり洗浄に使う溶剤も増えます。開業時は、扱う車の大きさと1日の塗装台数を書き出してから、方式と本数を決めると買い過ぎを防げます。
スプレーガンは、塗料を霧にする空気の圧力の考え方でも分かれます。カタログでは「低圧」「低圧・高塗着」のように書かれているものと、それ以外の従来型があります。
低圧タイプは、エアキャップから出る空気の圧力を抑えて、塗料の跳ね返りや周囲への飛散(オーバースプレー)を減らし、塗装面に付く塗料の割合(塗着効率)を上げることをねらった設計です。塗着効率が上がれば、同じ面積に使う塗料の量と、空気中に出る溶剤の量を減らせます。その一方で、霧化に多くの空気量を必要とする製品もあり、コンプレッサーの能力によっては使いこなせないことがあります。
低圧タイプは塗料を減らせるが、空気量の確認が先
低圧タイプのスプレーガンとは、エアキャップから出る空気の圧力を抑えて塗料の跳ね返りや飛散を減らし、塗装面に付く塗料の割合(塗着効率)を高めることをねらったガンです。塗着効率が上がると、同じ面積に使う塗料が減り、空気中に出る溶剤の量も減ります。ただし霧化に多くの空気量を使う製品があり、エアコンプレッサーの吐出量が足りないと、霧が粗くなって肌が荒れる原因になります。選ぶ前に、カタログの推奨使用圧力、1分あたりの空気使用量、パターン幅、対応する塗料(溶剤系か水性か)を書き出し、手持ちや購入予定のコンプレッサーで足りるかを比べます。試し吹きできる販売店があれば、実際の塗料で確かめるのが確実です。
口径(ノズルの穴の大きさ)は、吹く塗料の粘度と、塗る量で選びます。粘度の高い塗料や、一度に厚く付けたい下地には大きめの口径、粘度の低いベースコートやクリアーの仕上げには小さめの口径が合うのが基本の考え方です。
| 用途 | 口径の考え方 |
|---|---|
| プラサフ・サフェーサー(下地) | 粘度が高く厚く付けるので、大きめの口径を選ぶ |
| ベースコート(色) | 色むらを出さないよう、細かい霧になる口径を選ぶ |
| クリアー(上塗り) | 肌を整えて流れを防ぐため、塗料の推奨に合わせる |
| 小さな部分補修・ぼかし | 小型のガンや小さい口径で、吹く範囲を絞る |
具体的な口径の数字は、使う塗料のメーカーが出している技術資料に、推奨のガン口径と使用圧力、希釈率として書かれていることが多いので、まずそれに合わせます。同じ用途でも、塗料の種類や気温で合う口径は変わります。開業時は、下地用と仕上げ用の2本を最低限そろえ、ぼかし用の小型を追加するかどうかを仕事の内容で決めるとよいでしょう。ぼかしの考え方は自動車補修塗装の調色で説明しています。
口径は塗料メーカーの技術資料の推奨値に合わせ、下地用と仕上げ用を分ける
スプレーガンの口径とはノズルの穴の大きさのことで、吹く塗料の粘度と付ける量で選びます。プラサフやサフェーサーのように粘度が高く厚く付ける下地には大きめ、ベースコートやクリアーのように細かい霧で均一に付けたい仕上げには小さめが合うというのが基本です。数字は塗料メーカーの技術資料に推奨のガン口径、使用圧力、希釈率として書かれていることが多いので、迷ったらそれに従います。1本のガンで下地から仕上げまで吹くと、口径が合わない工程で肌荒れや流れが出やすくなります。開業時は下地用と仕上げ用の最低2本をそろえ、部分補修やぼかしが多ければ小型のガンを足すと、無駄の少ない組み合わせになります。
コンプレッサーの容量は、スプレーガンの空気使用量で決まります。カタログに書かれた「1分あたりの空気使用量」と、コンプレッサーの「吐出空気量」を比べ、ガンの使用量に余裕を持って上回るものを選びます。
塗装用の空気には、水分と油分を残さないことも大切です。圧縮空気には水分が含まれ、配管の中で冷えて水滴になります。水や油がガンに入ると、はじきやブツの原因になるので、エアドライヤー、フィルター、ドレンの抜き取りを設備の計画に入れておきます。
騒音規制法では、原動機の定格出力が7.5キロワット以上の空気圧縮機(環境大臣が指定する低騒音のものを除く)が特定施設で、都道府県知事などが指定した地域に設置するときは届出が必要です(騒音規制法施行令別表第1)。タンクが第二種圧力容器に当たる場合は、1年以内ごとの定期自主検査も必要です。中古のコンプレッサーで確かめる点は鈑金塗装の設備を中古で揃えるにまとめています。
コンプレッサーはガンとエアツールの空気使用量の合計で選ぶ
エアコンプレッサーの容量は、同時に使うスプレーガンの1分あたりの空気使用量に、塗装中に動かすサンダーやブローなどのエアツールの使用量を足し、その合計を余裕を持って上回る吐出空気量のものを選ぶのが基本の考え方です。タンク容量と、配管の長さや太さによる圧力の落ち方もあわせて考えます。塗装用の空気は水分と油分を取り除く必要があり、エアドライヤーとフィルター、ドレン抜きを最初から計画に入れておきます。原動機の定格出力が7.5キロワット以上の空気圧縮機は騒音規制法の特定施設で、指定地域では設置の届出が必要です(騒音規制法施行令別表第1)。タンクが第二種圧力容器に当たれば定期自主検査も要ります。
スプレーガンの仕上がりは、手入れで大きく変わります。塗料がノズルやエアキャップの穴に残って固まると、霧が片寄り、パターンが崩れます。毎回の作業の終わりに次の手入れをします。
シンナーでのガン洗浄は、有機溶剤中毒予防規則第1条の「有機溶剤等を用いて行う洗浄」に当たり、屋内で行うなら局所排気装置などのある場所で、保護具を着けて行います(塗装ブースの選び方)。作業主任者の選任も必要です(有機溶剤作業主任者とは)。
洗浄に使った廃シンナーや廃塗料は、事業活動で出た産業廃棄物です。廃油は、燃えにくいものとして環境省令で定めるものを除いて特別管理産業廃棄物に当たるため(廃棄物処理法施行令第2条の4)、扱える許可を持つ処理業者に委託し、マニフェストで管理します。廃シンナーの区分は処理業者と確かめてください。洗浄前の溶剤の在庫は、危険物の指定数量と少量危険物の計算にも入ります。
毎回の分解洗浄で仕上がりを保ち、廃シンナーは処理業者へ
スプレーガンの手入れは、作業の終わりにカップの塗料を出し、塗料に合った洗浄液で流し、エアキャップとノズルを外してブラシで洗うのが基本です。穴を金属の針でつつくと形が変わり、霧が片寄る原因になります。パッキンやニードルの摩耗による塗料漏れも定期的に見ます。シンナーでのガン洗浄は有機溶剤中毒予防規則第1条の有機溶剤業務に当たり、屋内では局所排気のある場所で保護具を着け、作業主任者の指揮のもとで行います。洗浄後の廃シンナーや廃塗料は産業廃棄物で、廃油は燃えにくいものを除き特別管理産業廃棄物に当たるので(廃棄物処理法施行令第2条の4)、許可を持つ処理業者に委託します。
下地用と仕上げ用の2本が最低限の組み合わせです。部分補修やぼかしが多いなら小型のガンを、水性塗料も使うなら水性に対応したガンを足します。
水性に対応しているかはカタログで確かめてください。対応していても、洗浄液が違うため、ガンを分けて使う工場もあります。自動車補修の水性塗料もご覧ください。
吐出空気量が足りていて、タンクの状態と書類が確かめられれば選択肢になります。タンクが第二種圧力容器に当たるかと検査の記録を、購入前に確かめてください。
見積や納品書に塗料代を載せられる自動車整備システムなら、1台ごとの材料費を記録できます。整備システム 比較のときは、鈑金見積を取り込めるかも確かめましょう。板金塗装の見積の作り方もご覧ください。
記載内容は2026年10月24日時点で公表資料を確認したものです。許認可や法令の個別の判断は、所管の官庁・自治体・専門家にご確認ください。
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